ONE PIECEの世界が蘇る! 尾田栄一郎「ONE PIECE / The Scroll」展
漫画『ONE PIECE』の作者、尾田栄一郎氏が手掛けた貴重な作品の数々を、伝統的な和紙とコロタイプ印刷で展示する特別展が開催。作品へのこだわりと、伝統技術との融合が魅力です。
ONE PIECEの世界が和紙とコロタイプで蘇る! 尾田栄一郎「ONE PIECE / The Scroll」展
集英社マンガアートヘリテージ トーキョーギャラリーでは、2024年7月9日(火)から8月12日(日)まで、尾田栄一郎「ONE PIECE / The Scroll」展が開催されます。
本展では、尾田栄一郎氏が『ONE PIECE』連載10周年、20周年などの記念に描き下ろした、横長の作品の数々を展示。これらの作品は、長年多くのファンに愛され、ポスターやグッズ、フィギュアなどにもなってきました。
今回の展示では、これらのイメージを可能な限り美しく、未来に届けるため、特別な紙と印刷方法を採用しています。
紙には、福井県にある岩野平三郎製紙所の伝統的な手漉き越前和紙を使用。1865年創業の同社は、明治時代に初代・岩野平三郎が絵画制作に優れた「雲肌麻紙」を開発し、横山大観らに愛用されてきました。現在も、長辺3メートルを超える大判の手漉き和紙を制作しており、日本で唯一の大判手漉き和紙工場として知られています。
印刷には、京都府の便利堂コロタイプ工房によるコロタイププリントを採用。コロタイププリントは、実用化された写真製版技法としては最も古い技術であり、100年以上も定着したイメージを残せることが歴史的に実証されています。京都の寺社仏閣の修復記録資料には、今でもコロタイプ印刷による写真が添付されているほどです。1887年創業の便利堂は、現在でもカラーのコロタイプ印刷を行う、世界で唯一の工房を持ち、法隆寺金堂壁画の原寸大撮影なども行ってきました。
尾田栄一郎氏は、作品の迫力をさらに増すため、原画を拡大し、ビビッドな色彩を再現するために、通常の商業印刷の4倍となる、1枚につき16~17版という版を用いて印刷を行っています。美しく強靭な和紙でなければ、10回を超える印刷には耐えられず、国宝や重要文化財の複製を数多く行ってきた便利堂コロタイプ工房でも、これだけの版数を使用するのは初めての試みです。イメージをブレることなく正確にプリントするためには、熟練の職人技術が不可欠です。
本展では、3枚の作品を計50版を用いて制作した、史上初の作品を展示。額装展示に加え、巻物(Scroll)状に表装した作品も初公開されます。また、紙漉きや製版~プリントの様子を記録したムービーを上映し、重ね刷りの様子が分かる制作過程のテスト刷も展示されます。
尾田栄一郎「ONE PIECE / The Scroll」展は、単なる漫画の展示会とは一線を画す、芸術的な体験を提供してくれる展覧会だと感じました。
伝統的な和紙とコロタイプ印刷という、一見漫画とは関係ないように思える技術を用いることで、作品の表現力が格段に向上していると感じました。特に、和紙の風合いとコロタイププリントによる深みのある色合いが、尾田栄一郎氏の絵柄に独特の奥行きを与え、これまでとは違った魅力を引き出していると感じました。
また、展示方法も工夫されており、巻物状に表装された作品は、まるで古文書を見ているような、歴史的な重みを感じました。制作過程のテスト刷も展示されていることで、作品がどのようにして完成していくのかが理解でき、より深く作品に没頭することができました。
『ONE PIECE』ファンはもちろん、芸術に興味がある人にとっても、一見の価値ありと言えるでしょう。ぜひ足を運んで、和紙とコロタイプ印刷で表現された『ONE PIECE』の世界を体感してみてください。