「三行」で紡ぐ怪しげな世界: 大濱普美子『三行怪々』が放つ不穏な魅力

作家・大濱普美子さんの初のショートショート集『三行怪々』が7月29日に発売。50~60文字の短い物語が200編収録され、奥深い世界観が展開される。泉鏡花文学賞受賞作家が描く、不気味で魅惑的な短編の世界を覗いてみよう。

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「三行」で紡ぐ怪しげな世界: 大濱普美子『三行怪々』が放つ不穏な魅力

「百文字病」にかかった作家が、50~60文字の短い物語を延々と書き綴ったという設定の『三行怪々』。作家・大濱普美子さんの初のショートショート集が、7月29日に河出書房新社より発売されました。

本書は、短いながらも深みのある世界観を持つ200編の物語が収録されています。わずか数行の中に、奇妙な事件や不可解な出来事、そして人間の心の奥底に潜む闇が描き出され、読者を不思議な世界へと誘います。

大濱さんは、2022年に第三短篇集『陽だまりの果て』で第50回泉鏡花文学賞を受賞し、その才能が広く知られるようになりました。本書は、そんな大濱さんの新たな魅力が詰まった一冊と言えるでしょう。

文庫化されたデビュー作品集『猫の木のある庭』も、多くの読者の心を掴んでおり、彼女の作品は独特の世界観と繊細な描写で、読者を惹きつける力を持っています。

『三行怪々』は、まさにその魅力が凝縮された作品です。短いながらも強烈な印象を残す物語の数々は、読み手の想像力を掻き立て、余韻を残すでしょう。

本書のタイトルにもなっている「三行」という形式は、一見シンプルながらも、大濱さんの独特な世界観を際立たせる効果を生み出しています。短い文章の中に詰め込まれた情報量と、そこから生まれる解釈の余地は、読者に新たな発見と驚きを与えてくれます。

「三行」という枠組みの中で、大濱さんは人間の心の奥底や、日常に潜む不気味な側面を描き出しています。その独特な視点と巧みな表現力は、読者に深い印象を与え、長く記憶に残る作品となっています。
『三行怪々』を読んだ後、私はしばらくの間、日常の風景の中に潜む不気味さを感じていました。それは、本書に収録された物語が、日常と非日常の境界線を曖昧にするような、不思議な力を持っているからでしょう。

例えば、猫を撫でているはずなのに、抱いている毛の塊が何なのか分からなくなるという話や、出口を探して階段を上った先が昨日だったという話など、日常の中に突然現れる奇妙な出来事が、読者の想像力を掻き立て、日常の風景を異質なものに見せてくれます。

そして、その奇妙さは、単に恐怖や不安を与えるものではなく、むしろ、日常の奥深さや、人間の心の複雑さを浮き彫りにするような、独特の美しさを感じさせます。

『三行怪々』は、決して万人受けする作品ではありません。しかし、そこに描かれた世界観は、読者に深い印象を与え、新たな視点を与えてくれるでしょう。

本書を読んだ後、私は自分の周りの世界を、今までとは違う視点で見られるようになった気がします。それは、大濱さんの言葉が、私の心の奥底にある何かを揺さぶったからなのかもしれません。

『三行怪々』は、あなたに、日常の中に潜む「怪」を、新たな視点で見せてくれる一冊です。
出典:河出書房新社
出典:河出書房新社

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まとめ作者