AI(人工知能)は、私たちの生活や産業に急速に浸透し、その影響力はインターネットの発明を凌駕するともいわれています。小中学校の教科書にもAIに関する単元が導入され、教育現場でもAI教育が重要な課題となっています。
そんな中、株式会社Gakkenより、学校図書館や公共図書館向け書籍『AIの世界へようこそ』(著:美馬のゆり氏)が2024年8月26日に発売されました。本書は、AIの基礎知識から社会への影響、倫理的な問題、未来への可能性までを網羅的に解説。専門用語を避け、イラストや図解を豊富に用いることで、子どもたちが楽しく理解できるよう工夫されています。
本書の特長は、AIを体験できるScratchゲームが掲載されている点です。実際にAIが動く様子を体験することで、理論的な理解を深めることができます。さらに、授業で活用できるワークシートがダウンロード特典として提供され、AIを活用した未来社会について話し合うためのワークも収録。多角的な視点からAIについて考える機会を提供します。
小学6年生から中学生を対象とした国語、技術・家庭、公民、理科の教科書では、AIに関する様々なテーマが取り上げられています。例えば、AIと人間の創造性、デジタル社会におけるAIの影響、AI技術の発展などが学習内容に含まれています。しかし、これらの教科書の内容を補完し、より深くAIを理解するために、本書は最適なガイドとなるでしょう。
著者の美馬のゆり氏は、公立はこだて未来大学教授で、学習科学、教育工学、情報工学を専門とする第一人者です。MITメディアラボやUC Berkeley人間互換人工知能センターでの客員研究員経験など、豊富な知識と経験に基づいた、子どもたちへの温かいメッセージが込められています。
本書を通して、子どもたちはAIの基礎を学び、AI時代を生き抜くための「AIリテラシー」を育むことができます。AIがもたらす可能性と課題を理解し、未来を創造していくための第一歩を踏み出せるでしょう。AI時代を生きる子どもたちにとって、本書は必読書といえるでしょう。
『AIの世界へようこそ』は、単なるAI解説書ではなく、AI時代を生きる子どもたちへの羅針盤のような存在だと感じました。AI技術の説明は分かりやすく、イラストや図解も豊富で、子どもたちが楽しく学習できる工夫が凝らされています。Scratchを使ったゲームは、実践的な体験を通してAIの仕組みを理解するのに役立ち、ワークシートを活用したディスカッションは、主体的な学びを促すでしょう。
特に、本書で強調されている「AIリテラシー」の重要性は、現代社会において非常に重要です。AIが生成する情報や判断を鵜呑みにするのではなく、批判的に評価し、正しく活用する能力は、これからの時代を生き抜くために不可欠です。本書は、この能力を育むための第一歩を踏み出すためのサポートをしてくれます。
美馬のゆり氏による、温かみのあるメッセージも本書の魅力の一つです。単に知識を伝えるだけでなく、AI時代における幸せや未来へのビジョンを提示することで、子どもたちに前向きな未来への希望を与えてくれるでしょう。
ただし、図書館向け書籍ということもあり、一般書店での入手が難しい点が残念です。多くの学校図書館や公共図書館に導入されることを期待し、より多くの子どもたちに本書が届けられることを願っています。本書は、AI教育に携わる先生方や、AIについて学びたい子どもたち、そしてAI時代の社会をどのように築いていくべきかを考える全ての人にとって、貴重な一冊となるでしょう。
また、本書を通じて、親世代もAIについて改めて学ぶ機会となり、子どもたちとの間で有意義な対話を促すきっかけとなる可能性も秘めています。AIという複雑な技術を、分かりやすく、親しみやすい形で提示している本書は、世代を超えた学びの場を創出する力を持っていると言えるでしょう。