芸人であり漫画家の矢部太郎さんによる人気漫画『大家さんと僕』シリーズの完結編『大家さんと僕 これから』が、新潮文庫より8月29日に発売される。
本作は、大家のおばあさんと2階を間借りしている芸人「僕」のちょっと変わった二人暮らしを描いた、ほっこり日常漫画。2017年の刊行以来人気を博し、2018年には手塚治虫文化賞短編賞を受賞、2020年にはNHKでアニメ化もされた。シリーズ累計140万部突破の大ヒット作だ。
完結編となる『大家さんと僕 これから』では、これまで通りの楽しい日々が続く一方で、二人の暮らしにも終わりが近づいてくる。新宿ランデブーや台風の中の無茶ぶりに対応するなど、微笑ましいエピソードが満載だが、そこに漂う切なさも感じられる。ページをめくるたびに、ほっこりとした笑いと感動の涙が止まらない、そんな作品となっている。
文庫化にあたり、矢部さん描き下ろしのカラーイラスト8点が収録されているほか、作家・小川糸さんによる寄稿「解説にかえて」も掲載されている。小川さんは、矢部さんの作品について「大切な人に、一生のうちひとりでも出会えたということは、もうそれだけで人生の宝くじに当ったようなものなのではないでしょうか。」とコメントしている。
矢部太郎さんは、今回の文庫化について「『大家さんと僕』が文庫になって、たくさんの方に手に取ってもらえてとても嬉しいです。このたび『大家さんと僕 これから』も文庫になることになりました。巻頭のカラーページは今の僕が描いた『大家さんと僕』です。じつは1作目には春と夏、2作目の『これから』には秋と冬と、季節をイメージしたイラストを収録しています。一緒に過ごした季節を感じながら漫画を読んでもらえたら嬉しいです。」と語っている。
『大家さんと僕』と『大家さんと僕 これから』。ふたりの「はじまり」、そして「これから」の一歩を、ぜひあなたも一緒に見守ってみてはいかがだろうか。
『大家さんと僕 これから』を読んで、改めて矢部太郎さんの漫画の素晴らしさを感じた。大家さんとの温かい交流、日常の些細な出来事、そしてそこに潜む切なさ。これらの要素が絶妙に組み合わさり、読者の心をじんわりと温めてくれる。
特に印象的だったのは、大家さんが「僕」に宛てた手紙のシーン。まるで、優しいおばあちゃんの愛情が伝わってくるようだった。手紙を通して、二人の絆の深さ、そして「僕」にとって大家さんがどれだけ大切な存在だったのかが、改めて伝わってくる。
また、小川糸さんの寄稿も素晴らしい。矢部さんの作品に対する愛情と深い理解が感じられ、作品の世界観をさらに広げてくれた。
『大家さんと僕 これから』は、単なる日常漫画ではなく、人生の大切なことを教えてくれる作品だと感じた。大切な人との別れ、そして「これから」始まる新しい章。この作品を通して、自分自身の人生を見つめ直すきっかけを与えてもらったように思う。